アークトゥルスやベテルギウスの荘厳な巨大さに思いを馳せては、そんなものを生み出すことのできる自然や宇宙の懐の深さに畏敬の念を抱くようになったのは。
そんな私にとって、環境問題を理解することと宇宙論を学ぶことはほとんど同義だ。
違いといえば尺度くらいじゃないだろうか。
いや、違いはもう1つあった。
環境問題と異なり、宇宙論(論というが物理学だ)は物理のテストの点数が7点(100点中)だった私には途方もなく難しいということが。
そんな私にも最新の素粒子物理学について優しく説いてくれたのが『強い力と弱い力 ヒッグス粒子が宇宙にかけた魔法を解く』だ。
理解できたようなできていないような、何とも微妙な読後感だったが。
そもそも素粒子とは何か
高校時代に物理をきちんと勉強した人ならいざ知らず、一般的な人の認識では全ての物質の最小構成要素は原子じゃないだろうか。
しかし実際にはそれぞれさらに分割できるのだ。
原子は原子核と電子によって構成され、その原子核はさらに陽子と中間子に分けられる。
(そしてこの本の中で述べられているヒッグス粒子もまた素粒子なのだ。)
物質の最小構成単位である素粒子が宇宙とどう関係するのかというと、それが最小構成単位であるがゆえにその由来を知ることは宇宙開闢の様子を知ることに繋がるということらしい。
ヒッグス粒子は水あめじゃない
覚えている方はいるだろうか?
3年前にヒッグス粒子が欧州合同原子核研究機関(CERN)によって発見された際にメディアがヒッグス粒子を「水あめ」のようなものと説明したことを。
「強い力と弱い力~」の著者である大栗博司氏によるとその説明は間違いだったらしい。
というのも、“我々を作っている物質の質量の九九パーセントは、素粒子の質量ではなく、その間に働く力によって説明されている”ためらしい。
残りの1パーセントにヒッグス粒子が関与しているのだが、私たちが安易に考えてしまうようにヒッグス粒子そのものが質量を持っているわけでも、「水あめ」的作用のためでもない。
カギは特殊相対論にある(ような気がする)
アインシュタインは特殊相対論の中で有名な公式「E=mc2」である。
エネルギーは質量(m)と光速の二乗(c2)の積に等しいというこの公式は質量とエネルギーが比例関係にあることを示している。
また、これはすなわち質量が「運動の状態の変わりにくさ」を表しているとも言える。
そのような点から考えればヒッグス場が「水あめ」であることはおかしいのだそうだ。
というのも、それは「質量の効果」と「抵抗の効果」を混同しているからだ。
ヒッグス場に関する衝撃の事実
なんとあれほど物質の質量の起源が発見されたと取り上げられていたにも関わらず、ヒッグス場はそんなことを説明していないのだ。
この本の後半では電荷ならぬ「ヒッグス荷」なるものまで登場し、素粒子の質量は「ヒッグス荷×ヒッグス場の値」に等しいと説明される始末。
「こいつは何を言っているんだ?」と思われるだろうが、結局のところ“質量のほとんどは陽子と中性子の質量に由来し、その起源は強い力のエネルギーを「E= mc2」で質量に翻訳したもの”であることが理解できればそれでいいのかもしれない。
何といってもこの本、私がここ数年で読んだ本の中で最も難解。
たった1度読んだだけでは何も理解できないに等しいようなものだ。
秋の夜長に物質の起源に考えを巡らすには格好の一冊。
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