2015年6月29日月曜日

開発途上国の職員を日本で研修させることに効果はあるのか?


つい先日、九州で2ヶ月近くにも及ぶ環境教育の研修を受講していたカウンターパートが戻ってきました。


彼が日本に出発したのは、私が一時帰国から帰ってきた翌日でしたので一緒に仕事をするのは実に2ヶ月ぶり!!


そして今日は彼にとって研修後の最初の勤務日なので研修の感想や今後のプランについて話し合いました。

彼からの話だけでも、どれほど彼が研修で学んだことが多かったか容易に想像できます。

また、モチベーションも一気に上がったようで、早くワークショップを実践したい様子。


まさかこんなに頼もしくなって帰ってくるとは・・・!!

カウンターパートが研修で得たもの



彼が参加していたのは環境教育の研修でしたので、例えばペットボトルを使った工作や大気汚染状況の調べ方を学んだとのこと。


研修で作ってきた品々
P的には写真に写っている風車を応用して発電キットを作りたい。


ああ、それと高倉式コンポストの作り方も・・・。
(JICAはこればかりプッシュし過ぎ!!)


また、研修が行われたJICA九州国際センターが北九州市にあるため、北九州市立いのちのたび博物館をはじめとした展示施設にも数多く訪れたらしいです。
(私たち環境教育隊員も派遣の4か月ほど前に同じ場所で研修を受けたのですが、スケジュールがあまりにもカツカツだったためその博物館には行けませんでした。超ガッデム。


それに加えて熊本県水俣市の水俣病資料館や長崎県の長崎原爆資料館にも訪れたようです。
(「お粗末だなー」と思ったのは、水俣病は開発途上国の研修員に絶対理解してもらいたい環境問題なのに、原爆の印象が強過ぎて彼からは大した話を聞けなかったことです。原発ならともかく、原爆は環境問題とは・・・無関係とは言わないけど・・・うーん。難しいところです。)


もちろん得てきたものは知識だけでなく、研修員同士のコネクションや上述したようなモチベーション向上もあるでしょう。
(ジャマイカから来た研修員が私と同期の環境教育隊員と知り合いらしく、相棒はその隊員の写真を見せてもらって「かわいかった」とコメントしていた。ワールドワイドだな~。)

ただ、工作や公害被害の知識、コネクションやモチベーションを得るために一体どれほどの予算が注ぎ込まれたのでしょうか・・・。


研修の費用はどれくらいか?



金かけりゃいいってもんじゃない


JICAはホームページ上でも情報公開に努めており、年間予算も公開されています。

そこで平成27年度の予算を見てみますと、日本での研修がどこに含まれているのかがまず分かりません。

技術協力プロジェクトの一環のはずなので、おそらくは技術協力プロジェクト関係費でしょう。

だとすれば予算は644億7,600万円が技術協力プロジェクト全体の予算ということになります。

しかし、このうちの何%が本邦研修の予算なのかが把握できません。
(※予算の細目の開示請求をすることは可能ですが、今回は予算は不明という前提で書いています。)

とはいえ、研修の内容と期間(今回は5月11日から6月24日まで)から想像すると途方もない金額が使われていそうです。


研修の参加者選びは適切か?



授業を見る度に彼の熱意には驚かされる。

こればかりは国によって事情が異なるとしか言えません。


私の職場であるEPA(環境保護局)には現在彼1人しか環境教育インストラクターがいません。

したがって今回の研修については、EPAからは自動的に彼が参加することになりました。


その一方で、たまたま同時期に行われていた研修にはボスからの指示で高齢の職員が行くことになってしまいました。

局長が何を基準にその老いた職員を行かせたのかは今も不明です。


研修終了後、未だに私は彼の姿を職場で見ていません。
(まさか日本で体調崩したとかで、そのまま退職なんてことに・・・。)


結論:本邦研修は分の悪い博打だ



今日早速作っていた研修の報告書
この後さらに他の政府機関を巻き込むワークショップの企画書も書き始めていた。
今彼の周りにはビッグウェーブが来ているので、この波には乗るしかない。


たまたま、いや、本当に偶然に今回の研修のテーマと内容が相棒の関心事と一致したから良かったものの、彼の興味からずれていたらどうなっていただろう?


実は相棒が日本での本邦研修に参加するのは今回が2度目。

前回は昨年の7月頃で、廃棄物管理に関するものでした。

廃棄物管理の担当者が他にちゃんといるにもかかわらず彼が行かされた理由は、彼が現廃棄物管理担当者の定年退職後に引き継ぐからということでした。


しかし、当の私の相棒は廃棄物管理にはそれほど関心がないため、研修から戻ってきても特にアクションをとることはありませんでした。
(だからこそ、今回の研修後も同じ状況になったらどうしようという不安が私にはありました。)


幸運なことに今回は大当たりだったようです。

ここまで書いてきたように、帰ってくるなり彼は色んなアイディアを出してくれています。

それどころか、既に具体的な行動に移ってもいます。


また、たまたま私の活動も「積極的にリサイクル工作などのワークショップを行っていく」方向にシフトしたばかりでしたので、今後は彼との相乗効果(ホリエモンの言葉を借りれば「シナジー」)が期待できそうです。


研修は13か国から13名が集められて行われました。

そのうちの何名に、私たちのように協働するパートナーがいるのでしょう?

研修から戻ってきて、職場にその経験を理解してくれる人がいなければ孤立してしまわないでしょうか?

研修員が帰国してからも確実に活動できる見込みがなければ研修費用の無駄のように思えて仕方がありません。


分の悪い賭けをするよりも、もっと効果的な技術伝達手段はあるはずです。



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