端的に書くと、任地のことをまだまだ理解できていないということでした。
この任地に対する理解とも関係するのですが、青年海外協力隊として任地で活動していると、人によって程度の差こそあれ活動を継続していくうえでの方針というか、スタンスができてくるように思います。
この方針あるいはスタンスは、職務経験の長い隊員であれば、それを基に形成することになるでしょう。
では、職務経験が短い、あるいは全くない隊員の場合はどうすれば良いのでしょうか?
この問いに対する絶対的な答えはないと思いますが、私の場合は活動中、もしくは派遣されるまでに読んでいた本が助けになっています。
また、方針などという抽象的なことでなくとも、実際に任地に行く前に書籍から得られるものは少なくありません。
そこで今回は協力隊参加までに読んでおくべき本を挙げてみます。
開発途上国一般について知るために
大風呂敷を広げてしまいましたが、そういえば私の経験上「開発途上国全般」について書かれた本は読んだことがありませんでした・・・(笑)。
ということで、開発途上国がどんな国なのか、どのような問題を抱えているのか、というトピックが書かれた本を挙げたいと思います。
1. 『絶対貧困―世界リアル貧困学講義』石井光太
(↑こんなカンジでAmazonのリンクを貼っていますが、クリックしたり、実際に購入されたからといって私にお金が入るということは一切ありませんので誤解なきよう。)
(↑こんなカンジでAmazonのリンクを貼っていますが、クリックしたり、実際に購入されたからといって私にお金が入るということは一切ありませんので誤解なきよう。)
この本は任地に来てから読みました。
著者の石井氏はフィリピンやインドに取材に行かれているのですが、貧困の実態を外国人という立場ながらも生々しく描写しており印象に残ります。
協力隊として派遣される場所が、この本の舞台のような所になるとは限りませんが、活動にあたっての想像力を鍛えるという意味で読んでおくべきです。
このシリーズは特定の1か国に絞って政治、経済、地理等の多角的側面からその国について学べるように構成されています。(かと思えば、「東南アジアを知るための50章」のように対象地域が広いものもある。)
私はこれまで海外に行く度にこのシリーズの書籍を読んできました。(ベトナム、カンボジア、フィリピン、それと当然ミクロネシアも。)
このシリーズを読めば、その国の概要はもちろんのこと、抱えている課題も知ることができます。
(おお、地球ひろばのサイトを見てみたら、場所が広尾から市ヶ谷に移っていた・・・!私は広尾にあった頃に「地球案内人」のインターン(?)をしたことがあります。特に何かが身についたということはありませんがw)
任地での考え方を広げるために
3. 『開発フィールドワーカー』野田直人
著者の野田先生は青年海外協力隊としてタンザニアで活動した経験があり、現在は人の森という国際協力の研修を主に行う会社を経営されています。
また、環境教育の協力隊員は派遣前の「技術補完研修」で野田先生の講義を受講できます。
今回取り上げた本の中で最も読んでもらいたい一冊です。
私は野田先生の影響で現地人のリアリティに寄り添うことが活動において最も大切だと考えるようになりました。(なんだか立派なことを書いていますが、「要するに現地人が働かないなら俺だって働かないぜ!ヒャッハー!!」というのは冗談ですが、彼らのペースを大事にするようになりました。まだまだなのですけどね。)
この本を読むまでに、例えば「ストロー型の浄水器」などの存在自体は知っていましたが、どういう形で開発途上国の、それを必要としている人達に流通しているのかということは全く知りませんでした。
中村氏の設立したコペルニクはまさにその流通に取り組むことにしました。
この発想は現場をよく観察し、日常的に外の世界に対してアンテナを張っていないとできないものでしょう。(現場にどっぷり浸かっている人は現場の中で解決策を探しがちです。)
現場の問題に対して柔軟に取り組むことがどういうことかを学べる一冊です。
5. 『善意で貧困はなくせるのか?――貧乏人の行動経済学』ディーン・カーラン他
貧困にあえぐ人がお金を手にした時に何を優先させるか、ということがよく分かる本。
著者のディーン・カーランもまた、現地人のリアリティを探ろうとしています。
あまりに印象的な本だったので、英語で書かれた原著もKindleで購入して、今読んでいる最中です。
6. 『開発援助の社会学』佐藤寛
学術書なので他の本よりも若干難しいかもしれません。
途上国の開発問題を考察する学問の大きな流れとして「開発学」(Development studies)というものがありますが(未だ体系立てられてはいませんが)、これは「開発援助が引き起こしうる問題を社会学的に考察する」一冊です。(社会学的に考察ってどういうこった。)
少し引用すると、
6. 『開発援助の社会学』佐藤寛
学術書なので他の本よりも若干難しいかもしれません。
途上国の開発問題を考察する学問の大きな流れとして「開発学」(Development studies)というものがありますが(未だ体系立てられてはいませんが)、これは「開発援助が引き起こしうる問題を社会学的に考察する」一冊です。(社会学的に考察ってどういうこった。)
少し引用すると、
”「善意は善行を保障しない」1 相手の事情を無視した善意は、相手を困惑させる2 相手の自己認識とこちらの認識のずれは相手を侮辱する3 相手の価値観を無視した支援は相手の生存戦略を歪める4 安易な施しは人を堕落させる”
といったことが書かれています。
特に3点目については現地人のリアリティを語るうえで欠かせない視点です。
ちなみに、以前著者の佐藤氏の講義を受講したことがありますが(アジア経済研究所主催で、たぶん毎年行われているセミナー)、淀みなく言葉をすらすらと発する方でした。(きっとめちゃくちゃ頭の回転が速いです。)
(ちなみにちなみに、この本はPがフィリピン大学に留学する際に持参したのですが、帰国間際になって荷物が多過ぎるってことで、同じく日本から来ていた他の留学生に押しつけ譲ってきてしまいました。Sちゃん、その節はごめん。うーん、もう一度読みたい。自分勝手だなw)
7. 『続・入門社会開発―PLA:住民主体の学習と行動による開発』プロジェクトPLA編集
タイトルに含まれているPLAとはParticipatory Learning and Action(参加的な学習と行動)の略です。
私たちが考えている以上に、開発途上国の人々の中には文字が読めなかったり、数値のような概念を理解できない人々が数多くいます。
そして、開発のターゲットとはそのような人々であるべきなのです。
この本では、そのために必要なことをフィクションを通して分かりやすく紹介しています。
特にコミュニティ開発の隊員が読むべきでしょう。(というか、研修期間中に読むように指示されると思う。)
8. 『参加型ワークショップ入門』ロバート・チェンバース
著者のロバート・チェンバース氏は開発学のメッカ、イギリスのUniversity of Sussexの開発学研究所の元教授です。
(サセックス大学がどれくらいメッカなのかというと、世界の大学ランキングの開発学カテゴリーで世界1位です。ちなみに、日本が誇る最高学府たる東京大学は16位です。)
上述のプロジェクトPLAはチェンバース氏の影響を最も受けていますので、この本もセットで読むことをお勧めします。
内容としては、PLAの具体的なワークショップ手法が色々載っています。
そのため、どちらかというと任地に派遣されてから読む本かもしれません。
チェンバース氏の思想は多くの国際開発専門家に影響を与えたらしいので、ご興味があれば彼の他の書籍も読んでみることをお勧めします。
(ちなみに、Amazonだと3,000円もする高価な本ですが、Kindle版で英語の原著を買えば1,000円くらいで済みます。内容的に難しい英語は使われていないので、後者の方がおススメです。そうそう、現地の人間にこの本をあげたいってことになった時のために、kindleよりも書籍版の方が良いのかも。)
フィールドワーカーの大先輩の思考を知るために
9. 『梅棹忠夫―「知の探検家」の思想と生涯』山本紀夫
日本を代表する文化人類学者である梅棹忠夫氏の文字通り思想と生涯を記した一冊。
アフリカをはじめとした未開発の地に赴く協力隊員がどのような心構えをするべきか参考になります。
梅棹氏の現地語学習方法は驚愕です。
(ちなみに、梅棹氏の「文明の生態史観」をkindleで読もうと思ったら見つからず。権利関係とかそういうこと?日本の出版業界め・・・。)
日本の事例から学ぶために
10. 『「社会を変える」を仕事にする―社会起業家という生き方』駒崎弘樹
「これから開発途上国に行こうというのに、日本の社会起業家の本?」と思われるかもしれませんが、私は最近この本を読んで駒崎氏のロジカルな思考方法が非常に参考になったためここに挙げました。
駒崎氏は日本の「それまで誰もが認識していながらも解決策を提示できなかった問題」に対して、根気強く、また柔軟に考えることで新たな手法(ビジネスモデル)を示し、実践しました。
おそらく開発途上国においても似たような状況に直面することはあるでしょう。
そのときに柔軟に考えられるかどうかが事態を打開する鍵になります。
例えばこの本で駒崎氏は、病児保育を行う保育園というハコモノを作ることを念頭において事業の準備をしていたのですが、それが首長の圧力による頓挫してしまいます。
悩んだ末に、とある一言からハコモノを用意しない病児保育という着想を得ました。
その後のご活躍は各メディアで報じられている通りです。
まとめ
最近はKindleのおかげで、開発途上国にいながらにして日本で発売されたばかりの新刊を手に入れることも難しくなくなりました。
とはいえ、まだまだ私がいる島嶼国や、これから皆さんが派遣されるような任地ではインターネットへのアクセスが限られていることもあると思います。
ですので、できる限り派遣される前に、そしてできれば協力隊に応募する前に、上述したような本を読んでみると良いでしょう。
また、私が挙げた以外にも、パナマの宮崎隊員のように推薦図書を紹介している方もいますので、是非探してみてください。
(「え?おまえがリンク集貼ってくれるじゃないのかよ?」と思ったそこのあなた。協力隊員は自分から率先して行動するものなのです。)
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