目的は、何故か今まで配布していなかった再利用可能な買い物袋の配布。ミッションは簡単なもので、プレゼンを終えた同僚の目配せにより速やかに配布を終えることができました。
おしまい。
いや、今回書きたいことはそんなことじゃないんですよ。どうも任地のチューク州が国家として独立するかもしれないという話です。たぶん、一介のボランティアがブログで扱うには敏感なトピックなのでJI〇AにNGを出されてしまうかもしれませんが(笑)。
何のために独立するのか?
チューク州を含む4つの州で構成されているミクロネシア連邦は1986年に国防をアメリカに委託した形の自由連合盟約国として独立しました。(そんな状態で独立と言えるが不思議だ。)
その自由連合盟約に基づき、俗にコンパクトマネーと呼ばれる多額の資金援助がアメリカからミクロネシア連邦に毎年供与されています。
ミクロネシア連邦の歳入の6割弱は海外からの援助金で成り立っていますが、その6割弱のうちの更に約4割がそのコンパクトマネーとなっています。
(2013年の数字では、海外からの援助金約1億1,100万ドルのうちコンパクトマネーは約8,000万ドルを構成しています。歳入全体が約1億9,600万ドルであることを考えると無視できない金額です。また、日本をはじめとした海外からの漁船に対する入漁料収入は全体の約2割です。)
チューク州政治的地位委員会(日本大使館の資料にはこう書いてある)はこのコンパクトマネーがチューク州に公平に配分されていないとして独立の提案を州議会に提出しました。
まぁ、要するに金のためですよね。
金の裏では権力が蠢く
ミクロネシアに限った話ではありませんけど、巨額のお金が動く時には裏で権力者が何やらごしょごしょしているわけですよ。(日本の例だと最近の東芝の粉飾とか。)
上で述べたチューク州政治的地位委員会(英語名称はChuuk Political Status Comission、略してCPSC)のメンバーがどうにもきな臭い。
一応チューク州の各島々から人選されているようなのですが、私の住んでいるウエノ島から加わっている人はグアムで弁護士をしていたけど昨年からチュークに帰ってきてEPAに局長のコネで就職したという胡散臭さMAXな人なのです。(EPAは私の配属先で、そこの局長の義理の弟にあたる人なのです。)
まぁ、コネ就職は構わないとして、本来その方にはプラスチック買い物袋の利用を禁止する条例をはじめとした環境関連法の整備が期待されているはずですが、本業そっちのけで独立運動していますよ。(EPAの仕事は全く進んでいる気配がないのに、チューク州の一般労働者の収入を遥かに越える金額が毎月給料として彼に支払われている。理不尽過ぎる。)
で、どうもこの独立の狙いは使途があらかじめ決めれらているコンパクトマネーを、州の独立によって自由に使える形にしてしまいたいようなのです。
もうお分かりですよね?
要するに州政府周辺で働いている人達がより多くのお金を手にするための独立運動なのです。そこに政治的理念や独立による尊厳の獲得などは一切ありません。
独立して経済的に自立できるのか?
100%不可能です。
上記のCPSCが提出した最終報告書によると、独立後の財源はアメリカからの(改訂版)コンパクトマネー、海外からの援助、入漁料が中心となるようです。(ちっとも本来の意味で独立する意思がないのが笑えます。)
CPSCメンバーである例の胡散臭い人が以前私に「チュークは自分たちで消費するものくらいは自分達で作れるようになるべきだ」と話してくれました。(当時はチュークにもそんなビジョンを描ける人がいるのかと感心しましたが・・・。)
ところがどうでしょう。
彼がメンバーを務める何とか委員会の報告書には産業振興や経済発展の道筋についてちっとも書かれていません。
アメリカに寄生する気に満ち満ちています。
(余談ですが、その報告書ではチューク州の伝統文化にも言及しています。曰く、「チュークから伝統文化がなくなったのは連邦政府が適切な対応を行わなかったためである。」だとか。そんなの現地の人達が積極的に残そうとしなかったのが原因でしょうに。そんなことを独立の根拠にするような連中の提案なんて怪し過ぎます。)
反独立派も当然いる
ネットで検索したら反対派のサイトを見つけました。
特にパスポートに関しては大きな問題があります。
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中でも、独立したら不都合が起きるサービスを列挙した記事がとても分かりやすいです。
特にパスポートに関しては大きな問題があります。
ハワイやグアムに出稼ぎや就学に行っている方たちはミクロネシア連邦のパスポートを利用しています。当然ですが、チューク州が独立すればそのパスポートが無効になります。
これはもう死活問題です。
というか、そもそもチューク州にいない人にとっては、いくら生まれ故郷とはいえ独立は百害あって一利なしでしょう。
元大統領もお怒り
モリ元大統領という方はつい最近任期を終えた方で、チューク州の出身です。
その方が「憲法には4つの州が揃ってこそのミクロネシア連邦と明記してある。独立してこの和を乱すことは許さん!」と発言し、どうやらお怒り気味のご様子。
昨日のリーダー会議でも初代大統領の御子息であるナカヤマ氏が同様のことを発言して独立前提の議論をぶった切っていました。
モリ氏もナカヤマ氏も名前から分かるように日系ミクロネシア人なのですが、日系だからこそ和を尊ぶのでしょうか。と、思いましたけどちょっと違うかなと。
これは私の想像でしかありませんが、アメリカという超大国と交渉して独立を勝ち取り、ようやく植民地支配を抜け出した実績に対する誇りが当時のミクロネシア議会にあり、その議長であったトシオ・ナカヤマ初代大統領や、その周辺にいた家族や政治家に脈づいているのではないかと思うのです。(こういう書き方だと遠回しに日本人賛美をしているように取られかねませんが、そんな意図は全くありません。)
チューク州独立推進派の人達は、そうしたミクロネシア連邦独立時から先人たちが積み重ねてきた諸外国からの信頼や外交をも無に帰してしまうおうとしている気がしてなりません。
Pが最も懸念していること
パスポートの下りで書いたように、現在留学している若者あるいはこれから留学しようとしている若者が最も痛手を被ると思うのです。
私が親しくしている現地の高校生は日本の大学に留学したいと言っているのですが、果たして日本政府から国家として承認されるかどうかも分からないのにそんなこと可能なのでしょうか?
また、日本政府から国家として承認されるまでは、今後継続的に行われる可能性のあるJICAの廃棄物管理能力育成プロジェクトにおいてチュークは対象外になるでしょう。これによってチューク州の自然環境は一層悪化するに違いないです。
ていうか、再三書いたように独立で得をするのは現在権力を持っている人達だけなのです。
独立推進派の人達はアメリカと上手いこと交渉して多額の援助を得て、それによってチューク共和国を建てようと考えています。実際のところチューク州や隣のヤップ州には中国が食指を伸ばしているため、安全保障的な観点からアメリカは交渉に応じざるを得ないでしょう。
けれど、そんなに上手く事が運ぶのでしょうか?
よしんばアメリカから資金援助を得ることができて独立できたとして、今以上に援助依存が進むだけでは?そうすると、太平洋上に新たに開発途上国が誕生するというわけです。
とりあえず今日はここまでにしておきます。
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