任地にいるとどれほどの議論が行われてきたのか、反対派のデモがどのように行われたのかを知ることがなかなかできません。
そういった背景もあって私の理解が必ずしも正しいとは言えませんが、この法案が青年海外協力隊員の活動に与える影響について考えてみたいと思います。
安全は信用によって保障される
私がいるミクロネシア連邦チューク州は第一次世界大戦の頃から第二次世界大戦の終わりにかけて日本に占領されていた地域です。
そのため1944年にはアメリカによって激しい爆撃を受けて多くの艦船がチューク環礁に沈みました。
当然被害は日本海軍の艦船だけに収まらずチューク人にも被害者を出しました。
そのような土地なので、ご年配の方の中には日本への印象が悪い方もいると聞きます。
そんな環境で、「ただ日本人である」という理由だけで私の活動に支障が出たり、何らかのトラブルに巻き込まれたことは一度もありません。
私はその背景には、これまで派遣されてきた青年海外協力隊員やシニアボランティアの活躍、あるいは日本のODAの好影響があったと信じています。
チュークの人々が私を信用してくれているからこそ、私の身の安全が保障されているのです。
安全保障関連法案は現地人からの信用にどう作用するか
現地人が安全保障関連法案成立以後に日本人をどう見るかというのは海外メディアの報道のされ方に依存すると言ってよいでしょう。
これは私たち日本人がテレビ番組や新聞、ネットを通してアフリカやアジアの国々にどのような印象を抱いているのかということと同じ理屈です。
とりわけ、リスクが増すという意味では中東に派遣されている隊員が差し当たっては危険でしょう。
では、中東でかなりの影響力があると思われる報道局、アルジャジーラのネット配信記事を見てみましょう。
”Japan passes law allowing troops to fight abroad
Japan's parliament has passed a law allowing its military to fight on foreign soil for the first time since World War II.
Japan marks WWII anniversary amid criticism
The upper house of the Japanese parliament passed the law on Saturday, despite fierce attempts by opposition politicians to block the move.
The approval makes the legislation into law, loosening post-World War II constraints on the use of force by the military to its own self-defence only.
(中略)
Opponents argue that the new laws, which would allow the tightly restricted military to fight in defence of allies, violate Japan's constitution and could see the country dragged into US-led wars.
Abe wants what he calls a normalisation of Japan's military posture, which has been restricted to narrowly defined self-defence and aid missions by a pacifist constitution imposed by the US after World War II.”
(Quoted from: Sep 19, 2015, ALJAZEERA)
いかがでしょうか。
タイトルからだけでも、今後日本は武器を持って攻め込んでくると思い込む現地人がいないとは言い切れません。
そしていくら善意で現地に派遣されている青年海外協力隊員とはいえ、その法案の成立に加担したと受け取られることは免れないでしょう。
「今、目の前にいる青年海外協力隊員は良い奴だ。でも軍事力を増強するような法案を止められなかった連中の1人でもある・・・。」
そんなふうに一瞬でも思われてしまえば、今までと全く同じ活動を続けられないかもしれません。
このように、海外で国際協力に携わっている人達のリスクが増す点については「ペシャワール会」の中村氏のような現場に長くいる方も危惧しています。
“紛争相手に軍事同盟と見なされ、日本や海外の日本人がテロの標的になる可能性が高まる”
(引用元:ハフィントンポスト日本版)
私もそう思います。
とはいえ青年海外協力隊員の派遣地域は安全なんでしょ?
そうとは言い切れません。
情報を集めたわけではありませんので断言はできませんが、派遣国の1つであるアフリカ西部のブルキナファソ、そして中南米のベネズエラで治安が急激に悪化しているようです。
また、そもそもテロというのは想定していない所で起こるからテロなのではありませんか?
それとも私は心配し過ぎでしょうか?
JICAはきちんと説明してくれ
青年海外協力隊候補生が駒ヶ根と二本松で受ける派遣前訓練では安全管理についての講義がトータルで3時間ほどあります。(もっとあったかも)
その中で幾度となく協調されることは「目立つことをするな」でした。
さて、私たち海外在住の日本人は今回の件ですっかり目立ってしまいました。
「お前らの同盟国のアメリカの軍隊に親が(子どもが)殺されたんだ!」
そんな八つ当たりで襲われる可能性も出てきました。
これについてJICAから何かしらの説明がないと私は納得できません。
というか、アメリカに付き従って海外に軍事介入したとして、その後それが泥沼になるであろうことを最も生々しく想像できることが人達はJICA職員の方たちのはずなのに、どうして何の反応もしなかったのかが私には不思議でなりません。
・・・最後のほうで話が逸れてしまいました。
まとめますと、青年海外協力隊員にとってこの法案は百害あって一利なしです。
だからといって、今派遣されている隊員に対して「活動をボイコットしろ」だとか「自民党の本部に抗議の文章を送れ」などと求めたりしたいわけではありません。
それはそれ、これはこれです。
日本の政治がどう動こうが、私たちは目前の活動を黙々とこなしていくだけです。
むしろ、こうなったからこそ、私たちこそが信頼を集めるべきではないかと思うのです。
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