そんな中、マンガでありつつも歴史を扱ったマンガを読みたいなーっと思っていた矢先に出遭ったのが竹良実の『辺獄のシュヴェスタ』。これは16世紀にカトリックにより行われていた魔女狩りから始まる大作です!秋の夜長にもオススメのマンガです!
16世紀のヨーロッパ社会の背景
もう高校生の頃に勉強した世界史はほとんど忘れてしまったので改めて調べ直してみました。ざっと調べただけでも当時のヨーロッパは何かととんでもない状況に会ったということがよく分かります。
・ペストが大流行
・宗教改革
・コペルニクスが地動説提唱
・オスマン帝国がすぐそこまで迫る
これらに加えてどこかしらで常に戦争が勃発していました。これらの社会不安が魔女狩りの要因の1つであったことは否めません。そして物語の舞台はそんな当時のヨーロッパの中心であったであろう神聖ローマ帝国です。
主人公は売られそうになったところを地力で脱出した子ども
主人公のエラは重税と不作に苦しむ両親の負担を減らすために冒頭でいきなり売られてしまいます。が、その窮地を持ち前の機転と発想で潜り抜けます。(どんな子どもだよ)
逃げおちた先で衰弱しきっていたところを1人の女性に救われます。時間が経つにつれエラは彼女のことをお母さんと呼ぶように。そんな「お母さん」は異端審問官から魔女扱いされて処刑されてしまいます。
よくこういう残虐な処刑方法を思いつきますよね・・・。
そしてエラを救うために他の「魔女」の名前を言ってしまいます。良心と引き換えに。
そして所は変わって「魔女の子ども」であるエラが収容されるのが同じ境遇の子どもを集めて「更生」される施設の修道院。教会側が一方的に排斥している魔女の子ども達を集めるような施設ですから、入院早々に試練を課されます。これが当時の現実だったのでしょうね・・・。
それにしても、聖書って自由に解釈され過ぎじゃないのって思うのは私だけですか?
周りは敵だらけの修道院で復讐を目指すストーリー
ショッキングな事件から始まった修道院での生活ですが、エラは虎視眈々と復讐に向けて計画を立てていきます。狙うは修道会の長、「お母さん」を奪ったまさにその人物であり、おそらく当時の時代背景を考えれば絶大な権力とカリスマを有している修道会総長エーデルガルド。
気付かれれば即殺されるような状況下で、これからエラがどう立ち回っていくのかに期待大です。
宗教が権力と結びつくと恐ろしいことになる
この『辺獄のシュヴェスタ』を読んで改めて考えたことですが、宗教が時の権力と結びつくと本当に恐ろしいことになります。神聖ローマ帝国でなくても、近代日本では廃仏毀釈という大きな運動がありました。これは本来は神道と仏教の分離を意図していたようですが、結果だけ見れば仏教徒の迫害になりました。これによって自分の信じる寄る辺を失った僧侶たちの喪失感も想像を絶するものだったことでしょう。
宗教は大概の場合、ただ一つしかない正義(=神)を押し付けてくるような気がします。もちろん、16世紀のヨーロッパでは周辺国の「あちらの正義」よりも「こちらの正義」が正しいと考えられないと侵略されるだけですから、国内を一枚岩にする意味でも必要だったのかもしれません。(そして魔女狩りは必要悪だったのでしょう。)
現代でそんな特定の価値観を国を侵略してまで押し付けてくるなんてナンセンス極まりないんですけどね。
もしも「魔女」扱いされた人達が迫害されていなかったら
もう1つ、『辺獄のシュヴェスタ』を読んでぼんやり考えたのが、もし魔女狩りがなかったらヨーロッパの科学はもっと進んでいたかもしれないんじゃないかってことです。
作中でも描かれますが、「魔女」と呼ばれていた人達の生業は医療でした。風邪をひいた人に薬草から調合した薬を売ったり、疫病の治療法を研究したり。「魔女」なんて非科学的な言われ方をされていましたが、そうした人達は明らかに科学者でした。
だからこそ、それらの技術が継承されていればヨーロッパの科学技術はもっと進んでいたのかもと思ってしまいます。
なんてことを考えずにはいられなくなる作品です!(笑)
作者は連載初デビューなので、今後の展開にも期待です。
最後に余談ですが、シュヴェスタはドイツ語で「お姉さん」という意味です。「地獄おねえさん」って書くと途端にギャグマンガっぽくなりますね。
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お姉さんと言う意味もありますが、キリスト教ネタであればシスターと訳す方が適切だと思いますよ。日本語で書けば修道女ですね。
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